Daniel H. Pink
『FREE AGENT NATION』

近年、アメリカでは雇われない生き方を選ぶ「フリーエージェント(Free Agent)」の数が増加する傾向にあり、すでに全労働人口の約25%を占めると言われる。本書は、自身もフリーエージェントのダニエル・ピンクによる「フリーエージェントのすすめ」である。

ピンクもかつては「組織人間(Organization Man)」だった。イェール大学で法学博士号を取得後、ビル・クリントン政権下のロバート・ライシュの補佐官として働き、アル・ゴア副大統領の首席スピーチライター(1995-1997)を務めた経歴を持つ。ピンクはある日、ホワイトハウスで気分が悪くなり、廊下に飾ってあったデンマーク女王から贈られたボールに思いっきり吐いてしまった。極度の疲労と医者に診断され、それから三日後、ピンクはすべての仕事を辞めてフリーエージェントになることを宣言した。

フリーエージェントは組織人間の対義語である。フリーエージェントは組織に属さず、決められた時間(例:月〜金の9時〜17時)に働かないのが特徴である。自分の仕事を決めるのは会社でも上司でもなく自分である。自分のスキルをウリにして、自分を必要とする人間と契約する。フリーエージェントとは、簡単に言えばハリウッドの仕事のスタイル(the Hollywood model)だとピンクは言う。

本書は、労働人口がフリーエージェント化すると世の中は変わるのか、という未来予測的なことにもページを割いている。近年「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が流行語になったが、ピンクによればフリーエージェントは、ワーク(仕事)とライフ(プライベート)を balance (バランス)させるのではなく、blend (ブレンド)させるのだと言う。仕事とプライベートの境界線がないのがフリーエージェントの特徴である。

また、retire(リタイア)ではなく e-tire(イー・タイア)がフリーエージェント社会に見られる現象だとピンクはいう。組織人間であれば定年を迎えて退職(リタイア)するが、定年を迎えてもインターネットを活用して仕事を続けるのがフリーエージェントの特徴である。日本のように団塊の世代が一斉に定年を迎えるアメリカでは、働き手が減少するため、今は組織人間でも、定年を迎えるといずれはフリーエージェントとして働かざるを得ないようだ。

ここまで読むと、フリーエージェントは自営業と何が違うのか、という疑問が生じる。僕が理解した限りでは、両者の社会的スタンスは大して違わないが、仕事のインフラ(環境)が伝統的な自営業と異なるのである。今の時代、極端な言い方をすればオフィスを構えないでも仕事ができるようになった。

日常業務は自宅のキッチンで、クライアントとのミーティングはスターバックスで、書類のコピー・印刷は Kinko’s で、というようにノートパソコンとインターネット接続と携帯電話とクレジットカードがあれば、誰でもフリーエージェントになれる時代なのだ。ちなみにクレジットカードは、事業の融資に使う人たちが増えてきているそうだ。

それではフリーエージェントになるにはどうしたらよいのか?「フリーエージェントのすすめ」である本書は、10のやるべきことを挙げている。

  1. 既にフリーエージェントの人に話しを聞く
  2. 自分の強みを5つ書き出す
  3. 自分が好きなことを5つ書き出す
  4. 強みと好きなことが交差する部分を見つけ出す
  5. それがお金になるのか精査する
  6. 特設サイトで自分の「やる気度」をチェックする(本には http://www.freeagentnation.com/ が紹介されているが現在は閉鎖されている様子)
  7. 予算を決める
  8. 家族や友達と相談する
  9. 知人のリストを作成する
  10. 知人全員に(絵はがきを送って)フリーエージェント宣言をする

『FREE AGENT NATION』はアメリカの話しであるが、日本もいつかは「フリーエージェント国家」と呼ぶにふさわしい国になるのだろうか?

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書籍名 『FREE AGENT NATION』
著 者 Daniel H. Pink プロフィール
出版社 Business Plus (2002)
出会い 『キャリアをつくる9つの習慣』(No.0205)でフリーエージェントの生き方が紹介されていて興味を持った。